きじ

海外サッカーの試合を観戦した感想、分析等

イタリアダービー

はじめに

今回は白熱のセリエAでの今シーズン最後の上位対決となる伝統のイタリアダービーユベントスvsインテルについて書きたいと思います。勝ち点1差で迎えたこの試合ですが(インテルは未消化1試合あり)、ホームのユベントスはこの試合に勝利してもスクデットは厳しいと言わざるを得ませんが易々とインテルに勝ちを譲るわけにはいかないと言ったところでしょう。対するインテルはこの試合を落とすとミランナポリに引き離されてしまいスクデット争いから脱落しかねない状況です。両チームにとって重要な一戦と言えるでしょう。

 

試合結果

   ユベントス     インテル
得点者
  チャルハノール(前半50分)
   

スタメン

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まずホームのユベントスですが長期離脱中の選手を除きほぼ全選手が揃ったといったところでしょうか。となるとスタメンとしてはヴラホビッチ加入後のベストである4-3-3を採用してくるかと思っていましたが、正直やや意外な形を採用してきました。ディバラ、ヴラホビッチ、モラタのトリオを起用しながらの4-2-3-1というおそらく今シーズン初のシステムを採用してきました。このシステムの採用によるメリットとしてはディバラがより内側でプレーが可能になり、4-3-3では左右ともに大外が空いてしまうという欠点を右の大外にクアドラードが侵入することで埋めることができました。しかしその分中盤の枚数が減ることになるため中盤のラビオ、ロカテッリの負担増が気になるところです。

対するインテルですがこちらは3CB中央のデ・フライが欠場した以外はベストメンバーで臨むことができました。特に大きいのはブロゾビッチの復帰でしょう。ブロゾビッチが不在の際のインテルは内容も悪い、結果も出ないと散々なため彼の復帰は本当に大きいと言えます。最近のインテルはブロゾビッチ不在の影響やFW陣の不調により得点が取れないことが多くありましたが、前線は今シーズンのファーストチョイスであるジェコ、ラウタロのコンビを起用してきました。欠場したデ・フライの代わりにシュクリニアルが3CBの中央、ダンブロージオが右で起用されました。

 

試合の流れ

結果としてはインテルの勝利となりましたが、正直内容的にはユベントスが勝利でもおかしくないといったところでした。私がユヴェントスファンということも多少は影響した見方かもしれませんが、この試合を観戦した多くの方は内容的にはユベントス勝利でもおかしくないと感じたのではないでしょうか。

この試合は立ち上がりからかなり激しい試合となりました。立ち上がりのラウタロイエローカードを受けるプレーを筆頭に前半からファウルが多く、激しい展開でした。その中でもユベントスはかなりの圧をかけて臨んでいたため、序盤はインテルを飲み込むような展開となり、この時間帯に得点を奪いたかった、取りたかったというのが本音です。特にインテルの3CB+ブロゾビッチによるビルドアップに対し、2列目より前の4人でほぼマンツーマンのような形である程度の圧をかけることでインテルのスムーズなビルドアップを阻止することができていました。ビルドアップの途中で引っかける場面も見られ、アッレグリの思惑はハマっていたと言えるでしょう。特に前半はハンダノビッチが出しどころを探すものの見つからず、保持することでゲームが止まってしまう時間もありました。これには時間の経過とともに解消するといったことができず、前半はそのまま、もしくはより全体が下がってしまうこともあり、かなりインテルは苦労したと言えるでしょう。

それだけに前半終了間際のPKがユベントスとしては本当に痛かったと言えます。個人的なことを言うとあの場面はこの試合の空気感的には取らないほうが良かったかと思います。しかしVARが介入してしまうと取らざるを得ないかなとも思うので物議となってしまうのは仕方ないとも思います。ユベントスとしては本当に痛い判定となってしまいました。

後半も前半同様にユベントスがやや優勢のまま進んでいったように感じます。前半同様インテルのビルドアップをスムーズにさせず、ボールを保持する時間も長かったことからユベントス優勢であったと言えるかと思います。しかしジャッジに不満を抱えていたこと、または内容がいいのに負けていたことなどから少しユベントスが焦っていたようにも感じます。セットプレーの際のリスタートやちょっとしたパスミスなどが散見され、いい流れながらも得点を奪えない、そのもどかしさが感じられる後半となりました。

逆に言えばインテルはそれを狙っていたようにすら思えます。前半から流れがあまり良くないながらもジャッジも味方し、1点リードで折り返したことで焦る必要がない、得点を奪われないまま時間を進めることに集中できていたようにも見えます。ユベントスによるビルドアップ対策に対し、チャルハノールの位置を下げる場面も見られましたがそれではさらに押し込まれると判断したのか基本的にはビルドアップが上手くいかないことを受け入れていたように思います。このことから基本的にはユベントスの勢いを押し返すのではなく、1点取れた幸運を活かして勢いを受け流すことをインザーギは考えていたように思います。激しい展開、微妙なジャッジが連続していたことも味方していたと思います。

得点の奪えなかったユベントスでしたが興味深かったのはラビオとアクシデントにより途中投入されたザカリアのパフォーマンスです。正直ラビオについては今シーズン最高、加入後で見てもトップクラスのパフォーマンスだったと言えるでしょう。特にプレスバックがかなりハマっていて、なおかつ負傷退場となってしまったロカテッリの代わりにボールの循環役を担っていました。そのロカテッリの代わりに投入されたザカリアは冬に加入後かなり印象的なパフォーマンスでしたが負傷から復帰直後のこの試合でもかなり良かったと思います。推進力を持ちつつ、バランスを取り、一人で決定機も作りました。

試合の流れに影響した要因としてはアッレグリの動きが少し遅いかなとも思いました。というよりプランBがないといったところでしょうか。得点がギリギリで奪えないもどかしい展開ながらも攻撃的なカードが不足していることが原因でもあるかもしれませんが、少し遅かったように感じます。試合を通して機能しているとは言えなかった左サイド(モラタとA・サンドロ)を少し長く引っ張りすぎたかなと思います。特にA・サンドロですがモラタが内に絞り、空いた大外に走りこむ場面がほとんどなく、正直怖さが足りなかったと思います。途中から投入されたデ・シーリオは全試合でとはいかないですが今シーズンかなりの好パフォーマンスで試合の流れを変えることもありました。この試合では結果として決定的な仕事をすることはできませんでしたが、個人的にはもう少し早い段階で投入したほうが良かったと思います。対するインザーギですが1回目の交代の時間も早く、さらに70分を過ぎたあたりの交代で1点を守り切るという明確なメッセージを発信していました。最近はインザーギに対する批判の声もありましたがこの試合に関しては1点のリードを上手く利用したプラン、采配ができたと言えると思います。

 

MOM

ラビオ

多くの人が言うようにおそらく加入後最高のパフォーマンスだったと思います。本来試合のMOMは勝利チームから選出するべきですが、この試合の両チームの出来、各選手のパフォーマンスを踏まえるとチームとしては敗北しましたがラビオを選出するべきだと思いました。相棒のロカテッリが負傷交代してからは繋ぎ役としてボールの中継点に立ち続け、ザカリアとのバランスを意識した立ち位置を取り続けていました。また、特筆すべきはプレスバックです。インテルのカウンター時はもちろんのことライン間に侵入しかけている相手とボールの間に綺麗に体を入れ、刈り取っていました。ユベントスの中盤は最近ではクオリティ不足を指摘されることが度々ありましたがラビオがこの日に近いパフォーマンスを常時発揮できるのであれば安心して任せることができるでしょう。

 

WORST

ハンダノビッチ

敗れてしまったユベントスですが、特筆してパフォーマンスが悪い選手が見当たらないかつインテルの主将の出来に不安を感じたためハンダノビッチを選出しました。序盤のパンチングミスを始め、不安定なプレーがしばしば見られました。チームが負けなかった、失点しなかったことで批判の声はほとんど聞こえてきていませんが、このパフォーマンスでは衰えの声があっても不思議ではないと思いました。個人的には来シーズンはいいかげん世代交代が必要だと前から思っていましたが、この試合のパフォーマンスを見てよりそれを確信しました。