きじ

海外サッカーの試合を観戦した感想、分析等

プレミアリーグ首位決戦          マンチェスター・Cvsリバプール

はじめに

今回は勝ち点差1で迎えるプレミアリーグ首位決戦、マンチェスターCvsリバプールの試合についてレビューしたいと思います。現在の世界で最強の2チームの首位争い直接対決ということで試合前からかなりの注目度だったと思います。実際の試合内容も世界のトップ2にふさわしい内容でかなりの激戦でした。正直書きたいことが多すぎるためかなり長くなってしまいそうです。

 

試合結果

マンチェスター・C   リバプール  
得点者
デ・ブライネ(前半5分)  
  D・ジョタ(前半13分)
G・ジェズス(前半37分)  
  マネ(後半1分)

 

スタメン

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まずホームのマンチェスター・Cですが主力でも主な欠場者としては守備の中心R・ディアスです。試合前から彼の不在による不安を指摘する声が上がっていましたが代役には大方の予想通りストーンズが起用されました。ラポルトとのCBコンビがリバプールの分厚い攻めをどのようにシャットアウトするかも注目ポイントとなりました。また試合毎に人選、配置が異なる3トップですが(試合中もかなり頻繁に起こりますが)、右からG・ジェズス、スターリング、フォーデンを並べてきました。私個人としては少し意外なスタートでした。特に右のジェズスと真ん中のスターリングです。リバプールと相性が良く、序列も高いフォーデンが起用されることは予想通りでしたが左での起用は意外でした。結果的にこのスタートの3枚は狙い通り、期待通りの働きをしてくれたとペップは感じているはずです。また立ち位置的に普段と違う部分がありましたがそれについては後述したいと思います。

対するリバプールですが史上最強のスカッドと言われることも少なくないメンバーが揃う中で起用された11人はほぼ予想通り、クロップからの信頼が厚いメンバーが起用されたといった印象です。最も層の厚い3トップですが加入から好パフォーマンスを続けるL・ディアスはベンチからのスタートとなりました。シティーと同様にリバプールもメンバーではなく立ち位置が普段と違う部分がありましたが後述します。

 

試合の流れ

試合前から伝わる熱気そのままにかなり熱い展開となりました。

結果としても内容としてもほぼ互角、世界最高のチーム同士のぶつかり合いにふさわしい素晴らしい試合だったと思います。お互いがそれぞれの持ち味を出しながらも相手をリスペクトした対策を講じてきており、ピッチ内でもピッチ外でも高度な戦術合戦となっていました。相手の対策として選んだ方法も両チームがほとんど同じでかなり見ごたえがありました。両チームで共通していた狙いとしては外から攻める、相手SB対策のWGの立ち位置が挙げられます。このふたつの狙いの前提として両チームの戦術上のキーとなっているのが両SBです。シティーは普段は左のカンセロを高い位置に押し上げ左肩上がりでの攻撃をしかけています。右の攻撃はWGを大外に開かせ、ハーフスペースの後方にウォーカーを、前方にインサイドハーフや中央のFWが担当することが多く、左右どちらもSBの位置が鍵になることが多いです。対するリバプールはリーグの最多アシストを記録する両SBが決定的な仕事をすることが多く、対戦相手は対策必須と言えます。両SBが鍵を握る両チームが相手の対策として選んだのは奇しくも同じ方法でした。両SBに対して対峙するWGをマークさせ、敵SBが前線に上がった場合は最終ラインに吸収されてもついていくことを基本としていました。特にシティーの両WGはそのための人選だったと言えます。普段は右WGで先発のマフレズではなくより献身性のあるG・ジェズスを起用したことからペップがいかにリバプールのSBを警戒していたかが伺えます。

試合展開としては序盤からかなりバチバチの熱い展開だったと思います。序盤に両チームに得点が生まれたことから特に前半はオープンな展開になり、ファンとしてはかなり楽しめる展開でした。しかしどちらかと言えば流れはシティーにあったと思います。リバプールの最終ラインの高さは今シーズンの特徴の一つですが、それを逆手に取るように裏を取る場面が多く見られました。特に効果的だったのはシティーのSBが普段よりも高い位置を取り、リバプールの最終ラインの大外から裏を取ることがありました。シティーは両ウイングを普段よりも内側に配置し、大外を空けていることが多かったことから試合前からこの形は狙っていたと思います。

対してリバプールの普段と違う部分はプレスです。普段のリバプールは両WGが外側から圧をかけ、ボールを中央に集中させて中盤で刈り取ることを目的としていることが多いです。しかしこの試合では両WGにシティーのSBを監視させていたため外から内に追い込むプレスをかけることができず、普段よりはプレスの圧が低くなっていました。しかしそれを補うために中盤のヘンダーソンラポルトにプレスをかける場面がありました。中盤にスペースを空けるわけにはいかないため常にプレスをかけていたわけではありませんが可能な場面では積極的にプレスをかけていました。シティーがSBを封じられた場合に頼るのはラポルトのフィード能力であり、それすら対策していたクロップの目はさすがです。ですが中盤を気にしなければいけないヘンダーソンのプレスはあまり効果的だったとは言えないと感じました。これについては非常に難しいタスクだったためヘンダーソンには負担が大きすぎたかと思います。また、リバプールはWGを相手SBを見させていたため、ボールを奪った後の攻撃にいつもより迫力が足りないとも感じました。トランジションは相変わらず早く称賛の一言ですが普段よりもゴールまでの距離が遠く、スピード感が少し足りないように思えました。

前半をシティーの1点リードで折り返したことでリバプールはさらにやり方を変えてきました(それがハマる前に早い段階で追いつけたのは幸運でしたが)。まず最終ラインの裏を散々取られたことからこれではいつかは止めきれなくなると判断したのか最終ラインを少し下げたように思います。また、ラポルトヘンダーソンがプレスをかけることも継続しながらタイミング次第でチアゴストーンズにプレスをかける場面もありました。ヘンダーソンより回数が少ないため明確に狙っていたのかチアゴのアドリブかは明らかではありませんがプレスの圧を強めることを狙っていたように思います。

リバプールがラインをわずかながらに下げたこと、ハーフタイムで物理的に流れが切れたことから前半よりも試合のペースが落ちたように感じました。シティーがゆったりとエデルソンを含めボール回しを行う時間もあり前半と比べると落ち着いた試合になりました。しかしそれにより試合の熱が落ちたわけではなく、逆に相手の隙を伺う一つのミスもできない緊張感が高い試合となりました。

その硬直を崩したのがシティーのマフレズ、リバプールのL・ディアス投入です。どちらも勝ち越し点を狙った選手の投入は予想できたものですがこの2人の投入によって硬直したバランスが崩れ、前半のようなオープンな展開となりました。その展開を上手く利用したのはシティーだったように思います。デ・ブライネの突破をF・ダイクがイエローカードで止める場面や終了間際のマフレズのチャンスがあり、シティーが相手の勢いをひっくり返してチャンスを作り出す場面が見られました。

結果としては引き分けとなり、試合展開を見ても互角、引き分け妥当といった感想でした。このカードについては次週のFAカップでの対戦も予定されており、どちらも勝ち進めばCLでも対戦する可能性があり、今シーズンの今後でこの2チームの対戦が見られるというのは非常に楽しみです。この2チームの全盛期があと何年続くか、両指揮官がいつまで指揮してくれるかはわかりませんが多くの対戦が実現してくれることを期待しています。

 

MOM

今回は試合内容的にも互角、結果も引き分けということでそれぞれのチームから1人ずつMOMを選出したいと思います。

マンチェスター・C

ラポルト

守備の要のR・ディアスを欠き、不安の声も聞こえていましたがそれを吹き飛ばすように素晴らしい出来でした。2失点したもののD・ジョタの決定的チャンスを完璧なスライディングでブロックするなど称賛されるべきプレー内容だったと思います

素晴らしい出来であったデ・ブライネも選出するべきだとは思いますが、彼が素晴らしい選手であることはわかりきったことなため、今回はラポルトを選出しました。

リバプール

F・ダイク

圧巻の一言です。リバプールの高い最終ラインが成立するのはこの人のラインコントロールと抜け出されたとしても追いつき、阻止できるクオリティがあるからこそです。特に終盤のスターリングに抜け出されても追いついたシーンや終了直前のマフレズの決定機はもちろんのこと他にも完璧な対応が多かったと思います。唯一デ・ブライネに抜け出されてしまった場面もありましたが、最終手段のイエロー覚悟のファウルで止めるという判断も守備者としては必要な判断でそれも含めほぼ完璧でした。

WORST

MOMと同様互角の試合であったためWORSTについてもそれぞれ選出したいと思います。

マンチェスター・C

スターリン

あまり目立つ場面がなかったことに尽きると思います。ネットを揺らしながらオフサイドの判定で取り消されてしまった場面もありましたが、そこ以外はリバプールのCB陣に完全にシャットアウトされていたと思います。本職でないポジションでの起用でチーム戦術の犠牲になってしまった感はありますがFWとしては物足りない出来だったと思います。

リバプール

ヘンダーソン

リバプールの中で唯一出来が悪い選手だと感じました。ボールタッチの回数が少ないのは両チームの戦術的に仕方ない部分もありましたが、味方へのパスが合わない場面もあり調子があまり良くないのではないかと思いました。一方ではバランスを取っていたという見方もできるため難しいところではありますが、主将の彼以外の選手の出来が良すぎて彼の微妙さが目立ってしまったという言い方もできるかもしれないです。