きじ

海外サッカーの試合を観戦した感想、分析等

エル・クラシコ

はじめに

今回は全世界が注目する伝統のクラシコ観戦の感想、分析を書いていきたいと思います。数年前までは世界で最も注目される試合だったクラシコですが近年は両クラブの衰退が進み、注目度が下がってしまい残念でなりません。前回対戦ではレアルの完勝、バルセロナの完成度の低さが目立ってしまう結果となってしまいました。しかし今回はシャビ就任後のバルセロナの復調が目立つ中での伝統の一戦となりました。結果は当初の予想外となりましたが、試合の流れやそれぞれの狙いについて書いていきたいと思います。

 

試合結果

 レアル・マドリード   バルセロナ
0 4
得点者
  オーバメヤン(前半29分)
  アラウホ(前半38分)
  F・トーレス(後半2分)
  オーバメヤン(後半6分)

基本フォーメーション

 

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ホームのレアルはエースのベンゼマ、普段は左SBでスタメンのメンディが欠場となってしまったため、基本フォーメーションとしてはモドリッチをファルソ・ヌエベ(偽9番)に置いた4-3-3と表現するのが正しいかと思います。ただ試合中はCFがいない4-2-4や中盤ダイヤモンドの4-4-2(2は外に開いたまま)のような形となることが多く、その時その時の選手のアドリブによって変化することが多かったと感じました。(試合中の選手のアドリブが多いのはいつもですが)

一方アウェイのバルサはいつもフォーメーションはいつも通り、予想通りの4-3-3。しかしおそらくほとんどの方は右SBはアウベスのスタメンを予想していたと思います。私も右SBがアウベスでなくアラウホが起用されたことにはかなり驚きました。他ポジションで注目されていたのは右WGかと思いますがここには最近好調のデンベレが起用されました。ただ正直右SB以外は予想の範囲内、普段通りの配置だったと思います。

レアルについて

レアルのこの試合はとにかくハマらない。この一言で済む試合だったと言えます。

エースで戦術的にも重要であり替えの利かない存在であるベンゼマの不在が大きく響いた結果となってしまったと言えます。ベンゼマが不在ということでアンチェロッティがどんな選択をするかは試合前から様々な予想がされていましたが結果として選んだのはCFを置かない布陣でした。表記としてはメディア毎に異なり、人によって場合によって変化していたため一概にこのフォーメーションで臨んだと定義するのは難しいですが個人的にはモドリッチをファルソ・ヌエベとした4-3-3または中盤ダイヤモンドの4-4-2(2はウイングとして外に開く)とするのがいいかと思います。私が見た限りは4-2-4-0と表記しているメディアもありました。表記が何であれこれらに共通していえるのはCFが不在ということです。ここ数年レアルにはベンゼマ以外に信頼できるCFが不在で何らかの理由でベンゼマが欠場する時はイスコのファルソ・ヌエベなどで乗り切ってきました。今回アンチェロッティが選択したのはモドリッチのファルソ・ヌエベでした。ただこれは通常のファルソ・ヌエベと異なり本当に相手CBの前に誰も配置しないという完全な0トップであったと思います。

正直これについてはまったくハマらなかった。相手CBのピケとE・ガルシアに効果的にプレスがかからないためパスコースを上手く消せない、中盤に人がいるだけで肝心のブスケツが消せない、プレスに行ってもスライドが追いつかずスペースを埋められないなど問題が多く発生していました。立ち上がり10分はレアルが気合を入れて入ったためシステム云々の話はなく勢いはレアルにありましたがゲームが落ち着き始めてからはこのシステムが付け焼刃であることが露呈し、残りの80分は完全にバルサペースでした。

前半が上手くいかなかったことからハーフタイムにアンチェロッティはてこ入れし、選手とシステムを替えてきましたがこれについてもまったくハマらず何がしたかったかよくわからないままゲームに決着がついてしまいました。

またもう一つの主力不在ポジションであった左SBについてはナチョを起用していましたが対峙するデンベレを止められず、ストレスを与えることもできていませんでした。個人的には最近好調のデンベレを考えればナチョよりは対人能力が高く安定感のあるアラバを左に起用し、ナチョをCBに起用したほうが結果論にはなってしまいますがこのゲームに関してはよかったかなと思います。ただここに関してはこの試合に限らず最近のデンベレの好調具合を考えると誰を起用しても大差はなかったかなとも感じましたが。

とにかくレアルについては主力(特にベンゼマ)の不在に対するアンチェロッティの采配が一つもハマらなかった、これに尽きます。

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バルサについて

まあ強かったですね。危ない場面もほぼなく得点以上にチャンスも多く、正直マニータまでいってほしかったというのが本音です。

主力で不在の選手はいなく、ほぼ自由に選手を起用することが可能だったため、今までの試合を踏まえたベストメンバーをシャビは選択することができました。注目されていたのは右WGにデンベレとトラオレのどちらを起用するかでした。結果的にシャビはデンベレを起用してきましたがここ最近の調子の良さ、持っている能力をこの試合でも存分に発揮していました。対峙したナチョに1対1で止められる場面もなく、ほとんど仕事をさせませんでした。4点目が入り、ゲームが落ち着いてからは明らかにスイッチが切れた場面も見られましたが、それまではかなりいい働きをしていたと言えます。この出来が継続して見られるのであればぜひ契約延長してほしいものです。

バルセロナのスタメンの中で驚きだったのは右SBにアラウホを起用してきたことです。これまで重要なゲームでは一貫してD・アウベスを右SBに起用してきたため今回もD・アウベスの起用を予想していた人も多いでしょうし、私も無難にD・アウベスで来ると考えていました。しかしこの采配はかなり当たったと言えるでしょう。わかりやすくレアルの左WGヴィニシウスに対人能力が高いアラウホを対峙させるということを狙っていたとは思いますが私はそれに加えて、この起用にはもう一つ狙いがあったと考えています。

それはE・ガルシアをCBに起用することです。最近のバルセロナは従来のブスケツに加えて右SBのD・アウベスをビルドアップに参加させ、起点をふたつにしていたことで相手のプレスに対する逃げ道を作っていました。それによりブスケツの負担減、プレス回避をより楽に行うようにしていました。ですがこの試合ではD・アウベスを起用しなかったことで起点が減ることを懸念していましたが、それを解決したのがE・ガルシアでした。E・ガルシアはビルドアップ能力が高く、ベンゼマが不在な中で中途半端なプレスを仕掛けてくるレアルに対し、中央からオバメヤンやペドリらに縦パスを通すことができるE・ガルシアがいたことでバルセロナは停滞することなくボールを効果的に循環させることができていました。普段通りのアラウホをCBに、D・アウベスを右SBに起用していたとすればD・アウベスとヴィニシウスの1対1ができてしまうだけでなくバルセロナの中ではビルドアップ能力に不安のあるアラウホがレアルの中途半端なプレスのターゲットにされてしまう危険性がありました。このふたつを同時に解決したのがアラウホの右SB、E・ガルシアの起用でした。まさにシャビ采配的中といったとこでしょう。

 

試合の流れ

試合の流れについてですが結果から見てわかるように終始バルセロナが圧倒していたと言えます。

まず立ち上がりの10分ですがその時間帯だけはレアルの狙い通りだったと言えます。勝ち点差がある中での対決となったため、ふわっとした立ち上がりになることが懸念されたレアルですがやはりベテランが多く、やるべきことがわかっている選手が多いためその懸念を振り払うかのようにかなりの圧力、パワーを持って試合に入ってきました。それが影響し、立ち上がりはレアルが主導権を握ったように思え、バルセロナは少しバタバタしていました。

しかし時間の経過とともに試合は落ち着き、徐々にバルセロナの狙い通りの展開になっていきました。レアルのいつも通りでないプレスに上手く対応し、ブスケツ、E・ガルシアを中心にテンポよくビルドアップしていきました。中盤から前がいつも通りの形でないレアルに対し、デ・ヨングとペドリがレアルの中盤に捕まらない絶妙な位置を取り続けたました。さらに右WGのデンベレが内、外自在にポジションを取り、ナチョに1対1を仕掛けつつビルドアップに参加するなどかなりの貢献度でした。この出来をこの試合に限らず毎試合見せてほしいものです(来シーズンも継続して)。

前半に2点取れたこともかなり大きかったです。前半を優位に進められたのはもちろんですが、ハーフタイムにレアルに戦術、システム変更を強いることができたからです。前半2点のビハインドを背負い、いつもと違うシステムと人選が上手くハマらなかったことから巻き返そうとさらに手を加え、ほとんど試したことがない3バックにして後半に入りましたがとにかく混乱していたと思います。やはりほとんど試したことがないシステムにするのは15分と短いハーフタイムでは足りなかったと言わざるを得ません。その証拠に誰が誰を見るかまったく整理されていなかったためにプレスがかからず、バルセロナにいいようにされて早々にとどめを刺されてしまいました。またそこから慌てて4バックに戻したことからレアルの慌てっぷり、アンチェロッティの迷走ぶりが顕著になってしまいました。

4点差がついてからはどちらも無理をする必要がなくなったため、試合のトーンがかなり落ちてしまいました。しかしバルセロナはシャビ監督を筆頭にさらに点を取りに行く姿勢を見せてはいましたがそれでも前半同様の圧力はかけれず、特に何も起きず静かにフェードアウトしていきました。

試合を通してバルセロナの調子の良さ、気合の入り方とレアルのハマらなさが目立ちました。この試合の出来を全試合で披露することができればリーガでは敵なしと言えるでしょう。さすがにそれは不可能ですがシャビが来たことによるバルセロナ復権を予感させる試合となりました。来シーズンがさらに楽しみです。

 

MOM

オーバメヤン

さすがにこの試合はこの人以外いないでしょう。

2ゴール1アシストで他にもチャンスの演出、プレス等ほぼ完璧と言っていいパフォーマンスだったと思います。一つ文句があるとすれば序盤のチャンスをものにしていればハットトリックも可能だったということくらいでしょう。

レアル側から見れば序盤に起きたファウルでレッドカードの対象だったという主張もあるかと思います。レアル贔屓の記事ではあの場面は大きく取り上げられるでしょう。

ただクラシコデビューとなったオーバメヤンの出来は素晴らしかったの一言です。

WORST

アンチェロッティ

采配がすべて裏目に出たと言えます。

バルサの好調具合、ベンゼマの欠場等不運な要素はありましたがスタートの配置、後半開始時の布陣変更、交代選手での流れを変える試みにおいてすべてが思惑通りに進まなかったと言えます。

試合後の会見で選手に謝罪済みということを自ら話したことでメディアからの余計な追及はされませんでしたが、CLでもし敗退済みなどすでにしていた場合は即解任となってもおかしくない試合だったでしょう。